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「DOORS-BrainPad DX Conference-」レポート③
データから顧客のペインを読み取り、顧客の行動と市場を理解する

2020年4月14日

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ブレインパッドは2020年2月19日(水)に、創業来初の大型カンファレンスとなる「DOORS-BrainPad DX Conference-」を開催しました。
このカンファレンスは、DX(デジタルトランスフォーメーション)にどう取り組んでいけば良いのか悩みを持つ企業の皆さまに向けて、各業界の最新の取り組みや成功事例に触れていただく「扉」となることを願い、開催しました。
当日はKeynoteに続いて、ブレインパッドがご支援させていただいている企業様の6つのセッションが開催されましたが、その中で注目度が高かったセッションについて、3回に分けてレポートいたします。

第1回目レポートはこちら 第2回目レポートはこちら

DX推進の一丁目一番地とも言えるデジタルマーケティングについて、「企業目線で行うもの」という先入観を抱いている人も多いかもしれません。
しかし、データの利用が多様化する現在、市場ではさらに視野の広い活用が求められています。
このセッションではデジタルマーケティングの実践の第一線で活躍する、デジタルガレージCDOの渋谷直正氏、日本経済新聞社DX推進室の山内秀樹氏をゲストスピーカーに迎え、「ユーザー視点のデジタルマーケティングはどう実現するか」というテーマを軸に現場の実践、DX推進に必要なマインドについて議論しました。

【日経の実践】デジタルマーケティングが現場のマインドを変えた

DX推進のためにデジタルマーケティングはどんな役割を果たすべきか。
日経新聞社の実践からは、「デジタルマーケティングの成功にはデータサイエンティストやマーケターがただデータを分析するだけでなく、現場にコミットし課題解決を探る姿勢が重要」という視点が見えてきました。

 

山内 ── 編集の現場に入ってみると、良いコンテンツなのに全く読まれていない記事がある、という課題がありました。
それでも試行錯誤して改善を続けていくと読者のエンゲージメントが上がっていくという経験を得ることができました。

 

データマーケティングになじみのない現場の社員たちにデータを見てもらうには当初は大きなハードルがあり、山内氏らデータサイエンティストがデータを分析してツールの使い方を教えるだけでは不十分でした。

 

山内 ── ツークリックで見えるツールを内製したり、ツールが使えない人にはTVモニターで見ることができるようにしたり、とにかくデータを身近なものにして、メンバーのマインドチェンジを図りました。
データの見える化が進んだことで、現場でもデータを活用したエンゲージメント向上についての議論が誘発されました。

 

その上で山内氏は、「どうすれば良いコンテンツが作れるか、記事が読まれているのかという具体的な仮説を持っているのは、実はデータサイエンティストではありません。お客さまのことを一番よく知っているのは、現場の人間です」と強調しました。

 

山内 ── 現場がデータを読めるようになると、改善のための仮説を立てられるようになることが分かりました。
データサイエンティストを100人雇っても解決しない課題が現場のデータ活用で解決できる。
データマーケティングは現場と一緒に帆走し、現場に寄り添うことで効果を発揮します。  

 

【デジタルガレージ】消費者・企業双方に恩恵をもたらすためのデータ活用

デジタルガレージの渋谷氏は「これからのデータマーケティングに必要なのは従来の企業が消費者のデータを囲い込む方法ではなく、消費者個人にデータを返し、企業が寄り添っていくというパラダイムシフトではないか」という見解を示しました。

 

データ活用の現場を数多く見てきた渋谷氏は、消費者個人の意識変化やクッキーの制限などの要因を挙げつつ、「企業がデータを囲い込んで経済圏を作るようなテータ収集と活用には限界が来ている」と指摘します。

 

渋谷 ── 企業目線でお客さまのデータを囲い込んで勝手に使う、一方通行のデータ活用の在り方は変えていくべきだと思います。
「データは企業のもの」から「データは個人のもの」という意識へパラダイムシフトしていく時期です。

 

渋谷氏が考える「データの主権を個人が持つデータ活用」のイメージは「パーソナルデータストア*」のモデルだと言います。
これまでは個人データを企業がバラバラに管理していましたが、「パーソナルデータストア」のモデルでは個人が自分のデータを一元管理し、そこから個人の裁量で企業にデータを提供していくようシフトします。渋谷氏はこのモデルについて「一朝一夕で普及はしないので、消費者が進んでデータ提供できる設計が必要」と続けます。

 

渋谷 ── データ提供を、献血のようなものと考えてみましょう。
自分のデータを使うことで人の命が助かったり、あるいは犯罪が減ったりすれば消費者もデータを提供しようとなります。
消費者主権のデータ活用は、まずは社会課題の解決から始めるべきだと思います。

*パーソナルデータストア……ネット上の個人の行動履歴といったパーソナル情報を自ら管理し、その活用方法を自ら決定する仕組み。日本では総務省が推奨する情報信託に基づいた「情報銀行(情報利用信用銀行)」が有名。

 

データ活用の価値は、市場を知りユーザーを理解することにある

日経とデジタルガレージの実践を踏まえて、当社の佐藤は「デジタルマーケティングからさらに世界を広げた先にあるのがDXであり、そのためには従来のデジタルマーケティングにある先入観からの脱却が必要ではないか?」と疑問を投げ掛けました。
これを受け、渋谷氏が「これからの施策で最も根本的で重要なこと」として挙げたのがデジタルマーケティングを使ったユーザー(消費者)理解です。

 

渋谷 ──「商品市場の大きなカテゴリーで見た場合、風邪薬でもお菓子でも、そこにはかなり売り上げの周期性があるのを担当者は肌感覚では感じています。
週ごとに売り上げのデータを取っていると去年も今年も同じような売り上げの「山」がある。
花粉症の薬をピークでないときに大量に売ってもしかたない。
どうせ売るなら売れる時期に販売した方が良いですし、実はこれは自分の会社のデータだけを参考にしているとなかなか見えてこない部分です。
こういった市場の動向を理解することは、もっと言うと「ユーザーを理解すること」と言えます。

 

渋谷氏は「ユーザー理解は一つの企業にこだわらないマクロな視点がないと難しい」と続けます。
当社の佐藤も「リアルとデジタル両方のチャネルを持っていながら、ネットで売れた商品と店舗で売れた商品のデータを照らし合わせて分析していなかった企業もある」と実例を挙げました。
データ活用をしているものの、肝心のユーザー理解の機会を損失している企業が多い現状が伺えます。

DXによって、データの向こう側と顧客のペインを想像する

顧客側に立ってユーザーを理解するためには、何が必要なのでしょうか。
佐藤は「世の中の全てがデータの中にある、あるいはDXで客観的で疑いのないものが分かるという考えは誤解。データを推察して、見えていない部分を見えるようにする施策が重要」と切り出しました。
この「データの推察」について山内氏は以下のように続けます。

 

山内 ── 日経電子版では、アクセス数や記事の滞在時間など複数の要素を合成して記事のエンゲージメント指標を作りました。
完全にエンゲージメントを計測できる訳ではないですが、数字が高いのはなぜか? と考える材料になります。
「データの向こう側」を想像し、大事なお客さまのことを考えるきっかけを作るのがデジタルマーケティングでは重要だと思います。

 

この他にも山内氏はユーザー視点を重視したデジタルマーケティングの一つとして、「読者が記事を読む朝の時間帯に合わせた記事配信の実施」を挙げました。
日経電子版では、記事が読まれる時間帯をデータ活用で可視化し、新聞社に脈々と受け継がれてきた日中に取材、夜に記事を公開するというサイクルを一新しました。

 

山内 ── 朝に記事を出すのは大きなシフトチェンジでしたが働き方改革の流れもあり、上層部も納得してくれました。
「文化だから」でなくデータを使った仮説が立てられていたので顧客最適の意思決定の議論もしやすかったです。

 

 

渋谷氏は「ユーザーの行動の結果を重視すべき」と言及しました。

 

渋谷 ── きっかけがないと、ユーザーの体験がどんなものか分かりません。
「自分の顧客にこうなってほしい」という優等生的なペルソナ設定になってしまったり、カスタマージャーニーマップがただの「願望」になっていたりします。
願望でなく、データから見た顧客のペイン(課題)に注目した方が現実的です。

 

顧客のペインとは具体的に何か。
渋谷氏は「サイトの申し込みで同じような項目を入力させられるのが手間、カードのポイントがたまっても即日使えない、などのすぐに明確なデータに上がらない行動の結果」と語り、その上でデータを介した企業・ユーザーの相互的な関係について触れました。

 

渋谷 ── 企業は「集まった顧客データは自分のもの」と思ってしまっていますが、やはり集めたデータをお客さまに返して役立てる、お客さまに信頼してもらって提供されたデータを集める、という視点が大事でしょう。
それが結果的にユーザーを深く知ることにつながります。

 

山内氏、渋谷氏は「顧客に最適なデジタルマーケティングには現場との連携が必須である」「ユーザー心理は行動の結果を注意深く推察しなければ分からない」とそれぞれのディスカッションのまとめとなる提言を述べました。

 

DX推進には欠かせないデジタルマーケティング。
意外なことに、ディスカッションを通じで分かった最も重視すべき点は製品開発や販売の現場との協力と、ユーザー心理という「リアル」に深くコミットする視点でした。
渋谷氏が指摘したように、ただデータサイエンティストがデータを分析する、企業がデータを独占するといった表面的なデジタルマーケティングの手法には限界が見えています。
これからのデジタルマーケティングは販売促進や流通という目的から一歩先に進んで、ユーザーに寄り添い、ユーザーをよりよく知るための深い実践となっていくでしょう。

 

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