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AIによる需要予測が製造業にもたらすメリットとは?

公開日
2020.10.30
更新日
2024.03.07

※本記事は、ブレインパッドが運営する人工知能ブログ「+AI」に掲載されている記事の転載版になります。

近年、第三次AI(人工知能)ブームの到来をきっかけにAIの活用シーンは急速な広まりを見せています。AIとビッグデータが産業構造にもたらした変化は、「インターネット革命に匹敵する」という指摘もあるほどです。このようなテクノロジーの変化の波は、国内GDPの約2割を占める製造業にも年々及んでいます。

では一体、製造業でAIが活用されるメリットとは何なのでしょうか。今回は、AI活用方法の代表例の一つでもある「需要予測」をテーマに、その概要やメリットに触れていきます。

製造業で導入が進むAI

現在、製造業の現場にAIの導入が進んでいる要因は、主に次の3つと言われています。

1.低下傾向にある製造業の国際競争力

日本の製造業は長らく、世界をリードする立場にありました。国内総生産を産業別に見てみると、製造業はサービス業に続く第二位となっており、国を支える一大産業であることがわかります。しかし、この10年は新興国の台頭やデジタル化の進展が要因となり、軒並み国際競争力を低下させています。この背景には、消費者のライフスタイルの変化に伴う

「製品ライフサイクルの短期化」が関係しています。人々のニーズが多様化し、次々と変化していく中では、そのニーズを的確に捉えたものづくりを行う必要があるのです。

2.労働人口の減少が続く国内情勢

かつては製造コストを下げるために、人件費の低い新興国への工場移転が積極的に進められてきました。しかし、新興国の人件費が上昇を続ける今、国内への回帰が現実味を帯びてきています。一方、日本国内では労働人口の減少が進み、人手不足が深刻化していることも事実です。このような現状のなか、日本の製造業には「労働集約型の産業構造」からの脱却が求められています。

3.インダストリー4.0 の到来

ドイツ政府が2011年から推進する技術政策「インダストリー(Industrial)4.0」。この中には5つの重点分野が定義されていますが、この政策が世界各国に広まりを見せているのは、「スマート工場の実現」という概念があるからに他なりません。この概念は、これまでオートメーション化が進んできた製造プロセスに「サイバーフィジカルシステム」という考え方を掛け合わせたものです。インダストリー4.0により、センサーネットワークの活用や自律的な生産システムを軸に据えた製造工程が次々と実現されています。2017年には、経済産業省によって日本版インダストリー4.0「Connected Industries(コネクテッドインダストリーズ)」が発表されました。このような状況下において、国内製造業各社ではAIやデータの利活用を通じた「ものづくりの抜本的な変革」が求められているのです。


生産量・在庫最適化のための需要予測で活用が進むAI

変革が求められる製造業各社の現場を見てみると、テクノロジー活用の進展度合いは、分野によって大きな差があることがわかります。特に、AI活用の進展を見せている分野が、モノやヒトの調達の最適化を図る上で欠かせない「需要予測」です。

需要予測とは、商品の需要に影響を与える要因とその度合いを分析し、将来の需要を予測することで「何をどれだけ生産すれば欠品を起こさないか?」「どの程度の在庫を持てば、余剰在庫を抑えられるのか?」という問いへの最適解を導く手法です。

この分野において最も重要な工程が、「最適な予測モデルを見出すこと」にあります。製品ごとの特性を踏まえて数ある予測手法を使い分けたり、組み合わせたりすることで、より精度の高い(誤差の少ない)需要予測を行うことが可能です。

AIによる需要予測がもたらすメリット

従来の人間が需要予測を行うやり方では、一定の経験を積んだ担当者であっても、AIと比べると情報分析・処理能力に決定的な差があるため、その精度にも限界があります。AIを活用することで需要予測の精度を高められるだけではなく、次のようなメリットも得ることができます。

メリット① 勘に頼らない生産計画が策定できる

収益を最大化するためには、商品ごとの過去の需要量に応じて最適な生産計画を立てる必要があります。しかし、商品ライフサイクルの変化や気候変動を始めとして各要因が複雑化していく中では、「結局、担当者の “経験や勘” に頼りがち」というケースも少なくありません。

このような場面でAIを活用すれば、過去の生産量や予実結果を踏まえた生産計画を立てることが可能になります。また近年は、コストを最小化するための生産工場の振り分けなども行われています。

メリット② 多品種少量生産への対応

需要予測を行うためには、製品ごとの異なるデータ特性を踏まえた予測が欠かせません。多品種少量生産の製造現場では予測プロセスが非常に複雑化するため、人間が毎回需要予測行っていては多大な工数が掛かってしまい、とても現実的ではないため「自動化」が必要不可欠といえます。そこでAIに搭載される「機械学習」の活用が大きな役割を果たします。

機械学習とは、データから反復的に学習を行うことで、そこに潜むパターンを見出す技術です。毎回違う製品を設計・製造するため需要予測が難しい多品種少量生産の現場でも、機械学習を導入すれば過去の製品ごとに蓄積した膨大なデータから自動的に需要のパターンを見出すことが可能となります。

メリット③ 無駄な在庫を削減(在庫最適化)

限られたスペースを有効活用し、製品の輸送・保管コストを最小化するためには、在庫の最適化も欠かせません。AIによる需要予測では、過去の需要データの他、価格・天候を始めとする複数の要因を踏まえた予測が可能です。そのため、各要素が上振れ・下振れした場合も含めた予測を算出することができ、「どこからが過剰在庫になるのか」という点を明らかにすることができます。

AIによる需要予測で、経営スピード・生産性を加速させる

今回ご紹介したように、AIを活用することで担当者任せの予測から脱却できるだけでなく、複雑化したデータから高精度な予測を立てることが可能になるため、経営における意思決定を迅速化することができます。また、人間に変わってAIが需要予測を行うことで、これまで需要予測に掛かっていた時間・工数が削減され、業務生産性も向上します。

今回は「需要予測」に焦点をおいてAI活用のメリットをご紹介しましたが、他にも、製造業ではAIを活用することで次のようなメリットを得ることが可能です。

  • 高精度な将来の予測により、売上や客数の変動要因の可視化
  • 数理最適化を用いたダイナミックプライシング
  • 画像解析技術を用いた目視検査の自動化による品質向上とコスト削減
  • 個々の顧客へ最適な商品をレコメンドをするための予測モデルの構築
  • ログデータを用いた機器の故障予知
  • 顧客行動の体系的な整理による、顧客の購買要因を可視化


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