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【インタビュー】人工知能時代の経営の考え方

2018年9月19日

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人工知能ブームが過熱する昨今、日本中の企業で「我が社にも人工知能を取り入れよう!」と大号令がかかっています。しかし、その選択は本当に正しいのでしょうか?まだビッグデータという言葉もなかった14年前にデータ分析のベンチャー企業を創立し、業界をリードしてきたブレインパッド 代表取締役会長 草野 隆史に、人工知能時代における企業経営の考え方について話を聞きました。

人工知能が活用されていく社会について社員と語りあう草野代表

データ分析のベンチャー企業として走り始めた2000年代

ブレインパッドは2004年に創業しました。会社を立ち上げた当時はどんな世の中でしたか?

当時からデータ分析という言葉はすでにありましたが、企業が自社のビジネスを改善するためにデータを溜めて活用しようという動きは極めて限定的でした。しかし、インターネットの普及によってビジネスのデジタル化が進行するにつれ、Amazon のリコメンデーション(商品推奨)に代表されるようなデータを活用して利便性、収益性を上げ、結果としてデータがより集まるというサイクルを回す好事例が出るようになり、次第に関心が高まっていきました。あとは、やはりビッグデータという言葉が生まれた2010年頃から世の中のデータ分析に対する意識が変わってきたと思います。

 

当時と今では何が変わったのでしょうか?

まず、行き来するデータの量と質です。少し前まではデータといえば、取引履歴のデータかユーザーの行動履歴が中心でした。今はデータの内容が多種多様になり、データの量も多くなってきています。更に、そのような複雑で大量データの価値創造をリアルタイムに処理しなければならないなど、人間が関与していては追い付かない状況が始まっています。そのようなデータを処理するための技術のひとつとして発達したのがディープラーニングです。

もともと機械学習の活用というのは10年以上前からありました。その頃からそれらの技術を使いこなす先進的な人々がいて、データを活用する中でまた先進技術が生まれ、その事例が広まるにつれて「うちの会社にも関係あるかもね」という感じで、触発されて関心を持つ人々が増えて技術が波及しているのが今の状態だと思います。

 

ビジネスに変革を起こすための攻めのIT

― 現在の人工知能を取り巻く状況について教えてください

「機械学習」という言葉ではピンとこないけれど、「人工知能」という言葉だと受け入れやすくなるために誤解され、過大評価されている部分はあると思います。何でも出来てしまう万能のエンジンが存在している、という感じで。

実際は、今の人工知能は特定の条件下では人間以上に精度を出すことはできますが、人間のように何でも柔軟に認識できるわけではありません。少し整理すると、従来はルール化できる単純な作業だけをコンピュータで自動化していました。それが発展して、最近ではもう少し複雑なことも可能になってきています。とはいえ、人を代替する高度で複雑な意思決定をいきなりコンピュータができるようになったわけではなく、コンピュータで処理できる領域が新しく立ち上がって広がってきているというのが今の人工知能です。つまり、使い方次第で、人工知能によって生産性をあげたり、新しい付加価値を創造したりすることが可能になってきている中で、自社の事業においてどこで使えばいいのかを見つけて、いち早く取り組んだ会社がその業界でのポジションを取っていくのではと思います。

図:人工知能と人間・コンピュータが担う役割(作成:草野 隆文)

 

― 企業が優位なポジションを取るためには何が必要でしょうか?

ビジネスの中でちゃんとIT を使いこなすことだと思います。その点では、海外の企業は進んでいます。海外では経営者が外部から入って来るケースも多いので、合理的でドラスティックな意思決定、ITを活用した改革や改善が進みやすいですよね。それに対して日本ではITに対する経営者の関心が低いことに問題意識を感じています。それは、2017年時点ですら日本ではCIO(Chief information Officer)を置いてない会社が44%もあるという事実からもわかります。対して、アメリカは2013年の段階で95%の会社がCIOを置いています。

人工知能はあくまで手段のひとつであり、それだけで何かを改善できるわけではありません。デジタルトラスフォーメーション、つまりIT を使って抜本的にビジネスを変えていく、というより大きなテーマの中で、その有効な手段(技術)として世界的に注目を浴びているのが人工知能です。これからの時代を生き残っていくためにITをどう活用していくのかについて、まず社内で議論する必要があります。解決の手段が多様にある中で、(人工知能など)特定の手段を使うことを目的にして、進めるのは合理的ではありません。

 

―今の時代、経営者はどのようなことに取り組むべきでしょうか?

技術は急速に発達しているので、人工知能で何をすることができるのかということを勉強するのは、とても大事です。しかし、競合企業が生産性を上げたり、売上を伸ばしたり、新規事業を作っていたりする中で、自社のビジネスの生き残りをかけて何をしていかなければいけないのか、その中でITをどう活用するのか、ということを同時に考えていかないと、方向性を誤ってしまうリスクがあります。

人工知能を使って成果をあげるには、自社のビジネスのことをよくわかっていて、かつITも理解している人材が必要です。自社のビジネス領域で「ITでこんなことができたら絶対にマーケットはついてくる、競合に対して差をつけられる」という機会を見つけ、リスクテイクする投資判断を伴うからです。現在、多くの企業ではITはIT、ビジネスはビジネスで分かれていて、両方の経験を積んで統合的な判断をできる人材は多くは育っていません。そのような人材の必要性と重要性を経営者が理解しているかどうかは非常に大事なポイントだと思います。

 

人工知能を目的としない経営の考え方

― ビジネスとITを両方理解する人材の育成についてはどのようにお考えですか?

現在、オープンソースで提供されている人工知能によって技術的なハードルは低くなってきているので、難しい技術ができる人というよりは、どこに技術を適用するかを考える人材が社内にいなければなりません。技術はコモディティ化が進み、使いこなす人は増えていきますが、自社のためにその技術をどう使うべきか考えられるのは自社の中の人だけです。そういう人材を育てる目的でPoC*をするか、人材を先に育てるかは、経営者の判断になると思います。そういうことが必要だということを経営者がちゃんと認識しないと、技術が高速にコモディティ化していっても、その恩恵にあずかれなくなってしまうでしょう。

 

― これからの時代を生き抜くために、我々はどうしていかなければならないでしょうか?

とにかく変化に強い企業体質にしていくしかないと考えています。つまり、それはITを内製化するということです。海外の先進企業は1日に何回もソフトウェアをリリースしています。ITを外部委託していてはそのスピード感を出すことは不可能だからです。

経営者が考えなければならないことは、人工知能の導入を目的化せずに、あくまで技術の一つとしての手段と捉えることです。まずは、これから変化が激しくなっていく時代に ITで自社のビジネスをどう強化し、変革していくのかというビジョンを作るのが先です。その中で最適な人材配置を図ったり、よりクリエイティブな仕事に人間が集中できる環境を整えたりするために人工知能を使うことができると思います。あるいは付加価値を生み出すためのグランドデザインが先にあり、そのビジョンに沿って人工知能の技術を適用してくという方法もあるでしょう。例えば、目的地に着くために歩くのか、タクシーに乗るのか、バスで行くのかといった手段は、コストやスピードなど、何を重視するかによって変わりますよね。

 つまり、世界のマーケットの状況などを見て、自社はどうあるべきか―今あるサービスはこのままでいいのか、オペレーションを変える必要はあるのか、新しいプロダクトを作るべきか―というようなことを考え、その先に手段として人工知能やデータを処理する技術を取り入れていくべきです。そして、中長期的な視点で IT を内製化する方向にシフトしていかないと、おそらく経営は成り立たなくなります。変化が激しく、将来を完璧に予測することが難しいこの状況で、経営者は変化に応じて迅速かつ俊敏に軌道修正していかなければならず、そのためにはITへの取り組みを加速していくことが大事だと思います。日本の多くの企業は今、その分岐点に立っているのではないでしょうか。

 

*PoC(Proof of Concept):本格的にビジネス適用に向けた取り組みを始める前の概念実証

 

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インタビュアー・文: 多根 悦子

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